2018年12月29日土曜日

白大島


白大島の仕立てを頼まれました。

息子にやっとお嫁さんが来てくれたので、そのお嫁さんへのプレゼントだそうです。



小紋はこのように追っかけ柄にするのが普通です。

左右対称になるのを避けるということです。



ちょっと濃いめの八掛で引き締まりました。


        嫁といふ娘の出来て年迎ふ       仕立屋お吟



2018年12月14日金曜日

身丈を伸ばす


訪問着の身丈を伸ばすよう頼まれました。

袷の身丈をお直しというかたちで伸ばすのは無理なので、

ほどいて一から縫い直します。

洗い張り屋さんから、ほどきと縫い合わせと湯のしがあがってきました。



袖丈を伸ばすには裏地が足りなかったので、継ぎ足しました。

身巾も裄も依頼者さんの寸法に仕上がりました。



総絞りのシックで素敵な訪問着です。


      霜の夜ふはりと絞り縫ひあげて        仕立屋お吟







2018年12月7日金曜日

身巾直し


身巾と裄を伸ばすよう頼まれましたが、

総柄の振袖なみに、そこらじゅう柄合わせされている付下げ小紋です。



どこが袖付けか分からないくらい柄が合っています。



悩んでいてもしょうがないので、脇で3.5㎝出しました。全体で14㎝広くなります。

ビフォーアフターです。





この部分だけじろじろ見れば、柄がだぶっていますが、着付けると違和感ないと思います。

ほっとしました。

それにしても、個性的ですてきな柄です。


      どんな人かしらん春著縫ひ進む       仕立屋お吟





      



2018年11月23日金曜日

産着を七五三に


産着を七五三用に直すよう頼まれました。



産着は平袖といって袖に丸みがないので、丸みを作ります。

袖口下も縫っていないので、縫い合わせます。



袴からのぞかないように、腰揚げは多めにつまみます。

肩揚げは、肩幅より小さくします。

産着には、背中に立派な模様があるので、羽織はいりません。

袴をつけると凛々しい三歳の出来上がりです。


生れしはついこの間七五三     仕立屋お吟



2018年11月17日土曜日

身巾直し


色無地の身巾を広げるよう頼まれました。

細かった若い頃の着物で、年輪を積まれると、どうしても身巾が足りなくなります。



脇で2㎝出したところ。長年の折り皺がくっきり出ています。

この皺を取るには、

正絹の胴裏を濡らして絞り、タオルで水気を取ったのち、さらにコテ(アイロン)をさっとかけたものを、

皺のところに当てて、そっとコテをかけます。



このように、皺はほぼ消えます。

畳み皺がついてお困りの方、どうぞお試しくださいませ。

くれぐれも目立たない部分から始めてくださいませ。


      春著縫ふ幸せ太りせし人に       仕立屋お吟



2018年11月11日日曜日

結城紬


結城紬の仕立てを頼まれました。

胴裏と八掛をまだ用意されていなかったので、

和裁の仲間が日傘作りに表地を使い、保管しておいた裏を安くお分けすることにしました。

未使用の着物だったので、新古品と言えましょうか。

八掛の色はぴったりです。



着れば着るほどやわらかくなってゆく結城紬です。




          冬ぬくし結城紬をざつくりと      仕立屋お吟





2018年11月6日火曜日

裾の破れ


よく着物を着られる方から、裾の破れを直すよう頼まれました。



ご覧のように、かなり破れています。

ここまで着てもらえると、着物も本望でしょうね。

しかし、身体になじんでいる紬なので、まだまだ着たいとのこと。

裏地の背縫いの下の方をほどいて、ひっくり返し、3㎝ほど短く縫い、破れたところを切り落とします。

裾袷を微調整して、裾を整えたら出来上がり。



新品のように蘇りました。

袖付けや身八つ口もほつれていたので、計六ヶ所繕いました。


        仲人のお世話も少し秋袷      仕立屋お吟











2018年11月2日金曜日

羽織の仕立て直し


生きていらしたら120歳のお婆ちゃんの羽織を仕立て直すよう頼まれました。

山繭で織られているそうです。霞の文様です。肩裏はかなりもろくなっています。



そおっと置いて、しるしをつけるところ。



お婆ちゃんが、孫子にも着られるようにと、縫い代をたっぷりとって縫ってあるので、羽織丈90㎝に仕立てられます。



とにかく肩裏がもろくて、針すごきをするのにも気を使いましたが、出来上がりました。

山繭は雑木の葉も食べているそうです。野趣味あふれる風合いながら、艶があります。そして素晴らしい軽さです。

お孫さんの七五三のお祝いに付き添われるそうです。

女系五代の物語です。


         七五三着物好きなる祖母も添ひ      仕立屋お吟







2018年10月27日土曜日

身巾を小さく


袷の小紋の身巾を小さくするよう頼まれました。

亡くなったお母様が着物好きで、タンスの肥やしにしておくのが忍びなくて、着付けを習いはじめられたそうです。

ところが大きすぎて、なんとも着にくい、、、ということで私のところにやってきました。



小紋ですが一つ紋があり、あらたまった場所に着てゆけそうです。



まず、袖を外します。身八つ口をほどき、裾もちょっとほどいてひっくり返して、2.5㎝脇縫いを詰めます。





ビフォーアフターです。2.5㎝×4=10㎝身巾が狭くなりました。

ついでに肩巾も1㎝小さくしたので、かなり着やすくなったと思います。


       直し着る母の形見の秋袷      仕立屋お吟



2018年10月21日日曜日

子どもの長襦袢


下の記事の七五三用の着物と一緒に、日本舞踊を習い始めたお姉ちゃんの長襦袢も頼まれました。

袷の着物をほどいて不要になった胴裏で仕立てるよう頼まれました。



胴裏だけでは白すぎるので、こけし柄の肩裏を振り布に使うことを思いつきました。



振り布をつけると、袷の長襦袢を着ているように見えます。



胴裏で長襦袢を作るのは初めてで、やや不安もあったのですが、羽衣のような軽くてしなやかな一枚となりました。

依頼者さんの発想に拍手です。

日本舞踊を踊るときに、すばらしい裾捌きとなることでしょう。


      七歳の日本舞踊に小鳥くる      仕立屋お吟



2018年10月15日月曜日

羽織を七五三に


お祖母さんの羽織から七五三の着物を作るよう頼まれました。

すでにほどいて洗い張りしてあったので、すぐ取りかかれます。



羽織の前身頃が、こどもの着物では後ろ身頃になります。



こけしの可愛い肩裏をそのまま使います。



羽織の面影を残した、子ども用に変わりました。

大島紬を融通の利かない才媛としたら、鹿の子絞りは偏差値の高いじゃじゃ馬娘。

せっかく付けたしるしが見えにくくて縫いづらいのですが、2、3ミリずれても布自ら修正してくれて、きれいに仕立て上がります。


       七五三鹿の子絞りは祖母のもの     仕立屋お吟






2018年10月11日木曜日

白大島


白大島の単衣の仕立てを頼まれました。

よろけ縞に蔓もの。しゃきっとして爽やかな反物です。



大島は耳の部分が広く、通常の背伏布では心もとないので、共布で作りました。
居敷当も共布が取れました。



織られて年数が経っていないので、やわらかくて衣擦れの音にも艶があります。




        衣擦れの音たてて縫ふ夜長かな     仕立屋お吟




2018年10月7日日曜日

袷を単衣に


お母様の袷の紬を、自分用に単衣に直すよう頼まれました。

薄地のはずの胴裏が厚地すぎて、着づらいとのことでした。

洗い張り屋さんにほどきと湯のしに出しました。



表地一枚になると、驚くほど軽くて、絹の光沢が感じられます。



袖と衿を縫った時点で、布団の下に敷のしします。ぱりっと仕上げるために、どんな着物でもこれは必須です。



手ざわりは結城紬に似ています。お母様にはかなり高価な買い物だったとか。これを着て、寄席や観劇にお出かけされることでしょう。

    
       秋冷のどこで織られし紬かな      仕立屋お吟









2018年10月2日火曜日

久留米絣


久留米絣の仕立てを頼まれました。

厚地の木綿は久しぶりです。



絣といわれて描くイメージとはかなり違い、素朴というより粋な感じです。



ざっくりした風合いなので、出番も多いことでしょう。


     膝に縫ふ久留米絣や秋深む      仕立屋お吟





2018年9月27日木曜日

付下げ


付下げの仕立てを頼まれました。

新潟は十日町の吉澤の友禅です。



今までにたくさんの訪問着や付下げを縫ってきましたが、
しなやかさや針通りのよさや皺になりにくさが群を抜いています。
しっかりした浜ちりめんです。



黒に近い茄子紺の地色に、雪輪の中の七宝や亀甲や鹿の子文様。

古典文様を大切にしつつ、洗練された絵付けです。



依頼者さんは、俳句つながりのお方です。
さて、どこに着て行かれるのでしょう。


       秋袷ちよいと俳句もたしなみて      仕立屋お吟





2018年9月19日水曜日

有松鳴海しぼり


172㎝という長身の方より浴衣の仕立てを頼まれました。

絞りで巾と丈の長いものを、苦労して探されたそうです。



有松鳴海しぼりです。最高の肌触りです。絞りですから、このように、左の普通の巾のものより縮んだ状態で売られています。



洗い張り屋さんで、二度洗いと湯のしをして巾丈を出してもらったら、このように落ち着きました。

1㎝でも長い丈に仕立ててあげたいので、繰越揚げはつまみません。縫い代もぎりぎりに抑えて裁ちました。



なおかつ、左胸には華やかな柄を、上前の衽の膝辺りにもよい柄を、左の衿も寂しくならないように気配りします。



後ろ身頃をご覧ください。たとえば、お尻の部分に左右同じ柄がきては最悪です。そうならないように気をつけます。

着物は左右対称の柄を嫌います。残り布ゼロという条件でも、なるべく粋になるよう柄合わせをします。

なんとか身丈172㎝、裄73㎝の浴衣が出来ました。色白の依頼者さんにお似合いのことと思います。


       縫ひさしの鳴海絞りへ秋の風       仕立屋お吟









2018年9月12日水曜日

七五三の揚げ


七五三の揚げを頼まれる時期がきました。



流水に蝶の文様の可愛らしい着物です。

揚げをほどいて仕舞われていたので、皺が無くて助かります。



七歳なので、肩揚げも腰揚げもつまみ代は少ししかありません。

特に腰揚げは下すぎると野暮ったくなるし、上すぎると大人っぽくなりすぎるので、七歳らしい位置を見極めなくてはなりません。

こんな感じでいかがでしょう?


     大好きな母のお下がり七五三       仕立屋お吟







     

2018年8月26日日曜日

茶事用小物


茶道の先生よりいろいろ頼まれました。

ミシンもセンスも要るので、そういうのが得意な仲間の出番です。

洋服で茶道のお稽古をするとき、懐紙や袱紗をはさむベストがあれば便利とのことで、



羽織をほどいて作りました。右は、残布で作った、ブラウスなどに合わす袷のベスト。



こちらは、紗の着物をほどいて作りました。右は、紗の透け感を生かした少し長めのベスト。



数寄屋袋(上二枚)と袱紗袋も頼まれました。



蓋をするとこんな感じ。

役立ってもらえると嬉しいです。


      飛びさうな紗に描かれしとんぼ柄    仕立屋お吟