2020年3月28日土曜日

着物を羽織に


袷の小紋を羽織に直すよう頼まれました。

通常なら、二つ返事でお引き受けするのですが、、、、

とても小柄な方のつい丈(おはしょりがない)の小紋で、布巾もありません。

あちこち継ぎ足してもよいとの依頼でしたが、どう計算しても、布が足りません。

かといって、せっかく仕立てるのに、短い羽織丈にしたくはありません。

この小紋は、依頼者さんのお母様の思い出の詰まった宝物なのです。

なんとか仕立てて差し上げたいと、しばらく保留にしていたら、、、、

偶然にもよく似たちりめんが手に入りました。


さあ、前代未聞の大手術の始まりです。




ほどいてアイロンを掛けて、細心の注意を払ってのしるしつけ。

肩巾が足りないので、掛け衿を切って継ぎ足しました。



衿は、おくみを継ぎ足して作りました。

折って何日も敷きのしします。



おくみだけでは足りないので、掛け衿も継ぎ足しています。



袖巾の足りないのは、地衿から持ってきました。



元の小紋の着物の身頃はすべて羽織の身頃になり、

おくみは衿になり、

地衿は袖に継ぎ足し、

掛け衿も衿と肩巾に継ぎ足され、もう布がありません。

圧巻は、このマチ。

そっくりな別布で作りました。

笑えるくらい違和感ないです。



出来上がりました。

肩で風切って歩きたい気分です。


       むらさきは亡き母の色花衣      仕立屋お吟


2020年3月24日火曜日

ちりよけ


うすものの道中着の仕立てを頼まれました。



透かし織りです。

足首までの長さにします。



裁つ前に、衿にベージュを持ってくるか、



黒を持ってくるか考えます。

悩ましいところですが、黒を持ってくることに決めました。

自ずから、身頃と袖の柄合わせも決まります。



袖口に、袖口布をつけて、高級感を出します。



巾広の衿も折って敷きのしします。



粋なちりよけ風道中着の出来上がり。

紐を付ける前に、敷きのしします。

鼓や長唄の演奏会への道中に羽織られることでしょう。


      うすものを縫ふ惜春の膝のうへ       仕立屋お吟



2020年3月20日金曜日

道中着の丈伸ばし


道中着の丈を伸ばすよう頼まれました。



蒔き糊と友禅染の絵羽の道中着です。

手触りから、衿の縫い代がたっぷりあることが分かったので、お受けしました。



衿の下半分をほどいたところ。

15㎝丈を伸ばせることが分かりました。



15㎝丈を伸ばすには、30㎝の胴裏を継ぎ足さなくてはなりません。

表地は裏にかなり返っているので、余裕があります。



出来上がりました。

15㎝長くなると、ずいぶん印象が違います。


        春袷十ほど若く見られけり      仕立屋お吟


2020年3月16日月曜日

四つ身の揚げ


七五三の撮影用に四つ身の揚げを頼まれました。

近年、年中七五三の撮影があるようです。

スタジオではなく、我が町なら、倉敷の美観地区あたりで。



唐子の地模様のある白生地から染められたそうです。

朱色のぼかしと緑の唐子の可愛らしいこと。

お母さんも十歳まで着られたそうです。

着物が喜んでいます。



七歳用に、幼すぎずおませになりすぎない位置で揚げをしました。

来月の撮影が楽しみです。


      七歳の着物にさくら咲きみちて    仕立屋お吟



2020年3月12日木曜日

袷を単衣に


袷の訪問着を単衣に直すよう頼まれました。

袷の状態の写真を撮り忘れましたが、

ほどきとふかしに出しました。



仕立てやすく真っ平になって帰ってきました。

要らなくなった胴裏は、新たに仕立てる色不祝儀に使います。



小花の刺繍がたくさん施されているので、模様を合わせてしるしをつけるところ。



単衣でも、袖と衿と掛け衿は2日ほど敷きのしします。



単衣の訪問着に生まれ変わりました。

春らしいごく薄い青、瓶覗色(かめのぞき色)です。

藍瓶にちょっと浸けただけの色の意からきています。



瓶覗てふ色縫ふも弥生かな      仕立屋お吟


2020年3月5日木曜日

結城紬


結城紬の仕立てを頼まれました。



桜の季節にぴったりな、淡い色彩の織と染めの反物です。

こういう追っかけ柄は、衽と衿にどちらの柄を使うか、依頼者さんに決めてもらいます。



衿に薄紫の染め部分を持ってくることにしたので、

絣模様の方が衽になりました。

衽のしるしを付けているところ。



袖と地衿と掛け衿は、縫って折って2日ほど敷きのしします。



とても針通りよく、さらりと仕上がりました。

八掛けも淡い色です。

          初花に間に合はせんと紬縫ふ      仕立屋お吟





2020年3月2日月曜日

身丈伸ばし


袷の身丈伸ばしは、部分直しではできなくて一から縫い直すことになりますと、

ずっとお断りしていたのですが、

ひょんなことから挑戦することになりました。



裄はたっぷりあるのに、身丈の短い訪問着です。

身長167㎝の人用に、14㎝伸ばします。

内揚げも、衽の縫い代も充分あることを手触りで確かめました。

裏は足りないので継ぎ足します。



衿の下半分をほどいたところ。

ここから中をひっぱりだして伸ばします。

先の見えないトンネルに入る気分です。

頭を使っていると、時間を忘れて夢中になりました。



左半身が伸ばせました。

出口の明かりが見えました。



無事、14㎝伸ばせました。

不可能だと思っていたことが可能になって、とても嬉しいです。


仕立屋も日々勉強や燕来る      仕立屋お吟