2019年7月31日水曜日

子どもの着物


子どもの着物の仕立てを頼まれました。



洗い張りをして、何十年も寝かせておいたものです。

雛祭りのとき、座敷に飾るそうです。



通常、子どもの着物は四つ身に仕立てるので、

後ろ身頃から衿分を取りますが、この着物は、衿を取っていません。

本裁ち(大人用)です。



よって、衽もちゃんとあります。

八掛は、四つ身仕立てと同じく、表地を折り返します。



飾ると、愛着のある柄に、さまざまな思い出が蘇るでしょうね。


新涼の座敷に飾る子の着物         仕立屋お吟






2019年7月27日土曜日

袷を単衣に


袷の紬を単衣に直すよう頼まれました。



袷の時の写真を撮り忘れましたが、

ほどきとふかしをクリーニング屋さんで済ませたところです。

背に染みがあるので、前身の縫い代に入るところに回しました。

訪問着などの絵羽模様でなければ、前後を替えることが出来ます。

また、紬は、裏表を替えることもできます。

希望身丈に足らないので、繰越揚げはつままずに、繰越裁ちとします。



衽の裾にも染みがあったので、左右を替えました。

右衽は、着ると見えません。

仕立て直しは、細心の注意が必要です。



目立つ染みが隠れて、新品のような一枚になりました。



麻の葉の絣です。


麻の葉はほんに佳き柄単衣縫ふ     仕立屋お吟





2019年7月23日火曜日

絞りの浴衣


浴衣の仕立てを頼まれました。

急ぎの盛夏用としては、これが最後でしょうか。



涼しげな色合いの、有松鳴海絞りです。

総絞りは、じゃじゃ馬娘。

つけたしるしが見えにくいのが難点です。

しかし、うまく飼いならせば、一を聞いて十を知る賢さがあります。

自らきれいに仕上がりたいという意思を持った反物なのです。



まず、背中やお尻のあたりに同じ柄が並ばないように気をつけます。



衿元には、華やかな柄をもってきます。



上前の衽の膝のあたりにも、ポイント柄をもってきます。

ひと夏の思い出をつくってもらいたいものです。


      名にし負ふ鳴海絞りの浴衣縫ふ        仕立屋お吟



2019年7月17日水曜日

道中着


単衣の道中着を頼まれました。



夏大島です。透けています。

着尺なので着物にもできますが、

ふと、道中着もいいかな~っと思われたそうです。



耳がつっているので、ごく細かく鋏をいれます。

単衣に仕立てるので、袷のように5㎜の切り目を入れることはできません。



紐飾りは、いつものお花です。



晩春や初秋にふさわしい一枚ですね。


梅雨の月紬縫ふ手を休めては       仕立屋お吟




2019年7月9日火曜日

二重揚げ


七五三の前撮りの揚げを頼まれました。

真夏に前撮りをすれば、空いていてゆっくり出来るようです。



それにしても、この大きさ。

下に吊るしてある、身長160㎝の方の絽の着物とあまり変わりません。

それを2歳の子が着るのですから、そうとう無理があります。



まずは、一つ目の揚げをしたところ。

身八つ口ぎりぎりで腰揚げをつまみ、

衿付けぎりぎりで、肩揚げをつまんでいます。

このままでは不細工ですので、二重揚げをします。



なんとか三重揚げにならずに済みました。

袖も長すぎるので、揚げをしました。

いやがらずに着てくれますように。


     幼子を涼しくあやしカメラマン       仕立屋お吟




2019年7月4日木曜日

男物を女物に


男物の夏大島を女物に仕立て直すよう頼まれました。

着物で通されたお父様の形見だそうです。

洗い張りして仕立てたものが、躾のついたまま遺されていました。



ほどいてのしたものにしるしを付けます。



男物には十数㎝の内揚げがありますが、

伸ばしてもまだ身丈が足りないので、おはしょりに隠れる部分に足し布をします。

まず、裾から90㎝のあたりを思い切って切り離します。



私の手持ちの布の中で、一番素材と色の近い物を継ぎ足します。

これでやっと全体のしるし付けに取りかかれます。



衽は大幅に足りなかったので、掛け衿を継ぎ足しました。

なくなってしまった掛け衿は、地衿を折って、見せかけることにしました。

大変やりがいのある仕事でした。


     縫ひあげてうすものに風生まれけり       仕立屋お吟



2019年7月1日月曜日

留袖の裄直し


留袖の裄を伸ばすよう頼まれました。

新しく買われた長襦袢に合わせて寸法を決めます。





まず袖を外して、袖巾を広く縫い直します。

留袖には比翼がついているので、比翼も同じく縫い直して、

しっかり敷きのしします。





元の折り目もきれいに消すことができました。

8月の息子さんの結婚式が待たれますね。


       八月の婚へ留袖しやんと着て      仕立屋お吟