2025年6月12日木曜日

紅型

 紅型の仕立てに掛かります。

この紅型、依頼者さんのなじみの骨董屋さんが、新潟の養蚕農家の蔵から古道具の箱と一緒に掘り出してきたものだとか。
現在のその農家のお嫁さんの、二代前のお嫁さんの、袖を通していない着物だそうで、虫干しの度に行李の蓋をあけて、風を通してきたので、色移りはあるが染みはなかったそう。
依頼者さんは、買ったのち悉皆屋へ解きのしに出し、気になる色移りの部分に和布用の絵の具で補色し、はるばる東京から倉敷の私の元へ送ってみえました。
しかし、補色部分のクリーム色はかなり目立ちます。(左側の縦線)
先ずは、袖と衿をつくって敷きのし。
袖付け側は仕方ないにしても、袖口の変色は隠れるよう、深く縫いました。
衿は、変色が隠れるよう、狙いを定めてきれいな部分でつくりました。

衽縫いや衿下にも変色が出ないよう工夫したので、前巾と衽巾は希望サイズとは微妙に違います。

仕立てて驚いたのは、ふつうの和服と違って、紅型はどこもかしこも衿までも左右対称であること。
ザ、南国♪という感じです。

身丈も足りないので、おはしょりで隠れる位置に足し布をしました。
あとは、変色部分に色を加えるかどうか思案中の依頼者さんへバトンタッチです。
依頼者さんがとても喜んでくださったので、仕立屋冥利に尽きます。
   縫ひあげて吊るす紅型南風    仕立屋お吟






2025年3月20日木曜日

久留米絣

久留米絣の仕立てにかかります。



人間国宝、松枝哲哉さんの作品の様です。

ほどかれて洗い張り済です。

繊細な絣紋様に、さぞかし括りや染めの作業が大変だったろうと想像します。


袖とバチ衿をつくって敷きのし。


前に縫われていたのと同様に、


目立つ絣を横一列に揃えました。

雪国の山々に映える、辛夷の白い花のような絣です。

    魚は氷に上りよき織りよき絣   仕立屋お吟




 

2025年2月7日金曜日

胴裏交換

一つ身の傷んだ胴裏を、新しい胴裏に取り替えます。 


アンティークの大胆な柄が可愛らしい二枚の一つ身です。


傷んだ胴裏を外して、寸法を測り、同じものを新しい胴裏でつくります。


裏地が新しくなると、表まできれいになった気になります。



一枚は、袖の裏も新しくしました。

袖口布を袖巾から捻出するという、特殊な縫い方がされていたので、

右袖のみほどいて、左袖を見ながら同じに縫いあげるという、珍しい縫い方をしました。

達成感があります。

   赤に黄に絹染められし春の雪     仕立屋お吟