2019年10月27日日曜日

男物アンサンブル


男物の大島のアンサンブルの仕立てを頼まれました。



亡きお父様の着物を、

お母様が洗い張りに出してきれいに取っておかれたものです。



羽織の衿は一番に折って、何日も布団に敷きのしします。



お父様は長身でしたので、肩裏や袖裏に足し布がしてあります。

洗い張り屋さんがほどかずに洗ってくれていました。



乳(羽織の紐通し)を付けているところ。

女物とは反対の向きに付けます。



男物の羽織は、一年に一枚あるかないかなので、虎の巻を見ながら縫います。

仕上がってほっとしています。

着物と長襦袢もお正月までには仕上げましょう。

着物好きの奥様と初詣に行かれます。

秋深みゆく衣擦れの音に縫ひ      仕立屋お吟






2019年10月23日水曜日

長襦袢


長襦袢の仕立てを頼まれました。



厄除けとして古くから使われる鱗文様です。



しゃり感のある生地は、上に着る着物の振りから長襦袢がのぞきがちになるので、

通常は直角になっている袖下に丸みをつけました。

さらに、肩巾をやや長めに、袖巾をやや短めにしました。

これで大丈夫かと思います。



依頼者さん、半衿は白が好みなので、市松の凹凸のある変り織りを張り込まれたそうです。



鱗文様は、一方ばかり向いているので、

上前の前身頃に上向きの鱗を持ってきました。

下前は下向きの鱗にしました。

後から見ると、右が上向き、左が下向き。袖は、右が下向き、左が上向きです。

長襦袢といえど、左右対称にならないのが、仕立屋の美学です。

紅葉狩りに初下ろしされるそうです。


半衿は白が好みや菊日和      仕立屋お吟







2019年10月20日日曜日

訪問着を七五三に


七歳の七五三用に、着物を直すよう頼まれました。



お祖母さまが娘時代に着られた訪問着です。



まず、身巾と肩巾を狭めました。かなりほっそりしました。



七歳なので、おませすぎず幼なすぎない位置で揚げをしました。

印象的な紺が素敵です。


       瑠璃色の祖母の着物を七五三     仕立屋お吟






2019年10月17日木曜日

掛け衿


浴衣の掛け衿を付け直すことにしました。



某百貨店で買った依頼者さんのお気に入りの反物で、仕上がるのを楽しみにしていらしたそうなんですが、

掛け衿の左右に同じ柄が来ています。



百貨店の仕立ては、とても丁寧だと聞いていますが、残念です。



残り布があったので、下前になる見えないところで継ぎ足したりして、

良い柄を持ってきました。

衿元がすっきりしたのがお分かりかと思います。


畳紙に夏の思ひ出しまひけり      仕立屋お吟






2019年10月14日月曜日

着物の揚げ


八歳の女の子の揚げを頼まれました。



日本舞踊の発表会で着ます。



八歳だと、肩揚げと腰揚げは、このくらいの位置がよさそうです。

肩揚げは、肩巾より少し小さく、腰揚げは、おませすぎず幼なすぎずといったところ。


八歳の日本舞踊に小鳥くる       仕立屋お吟




2019年10月10日木曜日

牛首紬


袷の紬の裄と袖丈直しを頼まれました。



牛首紬だそうです。なんともいえない魅力的な風合いです。検索すると、

「絹糸の原料であるカイコの繭は、通常一頭のカイコが作るものだが、まれに二頭のカイコが入っているものがあり、これを『玉繭(たままゆ)』という。玉繭は二頭の糸が内部で複雑に絡み合っているため製糸は難しく、普通はいったん真綿にしてから糸にするが、白峰の人々は先祖伝来の技でこの繭から直接糸をつむぎよこ糸とし、通常の絹糸をたて糸として織り上げる。これが牛首紬である。 」

とあります。紡いでできた節に、とてもよい味わいがあります。



袖巾と袖丈を出して、湿らせた絹布をあてて折り目をとって、敷きのししました。

肩巾も出して、同様に折り目をとりました。

仕立てがきれいでしたので、お直しもしやすかったです。



着付けると、軽くて暖かいことでしょう。


艶秘めし牛首つむぎ秋灯下    仕立屋お吟



2019年10月4日金曜日

裄伸ばし


裄伸ばしを頼まれました。

身長169㎝なので、いっぱいに伸ばしたいのですが、

裏地の巾が短めです。



そこで、裏地を継ぎ足して、袖巾をいっぱいに出し、敷きのしをするところ。



なんとか、裄70㎝弱まで伸ばせました。

真綿紬だそうです。

ご両親の介護で忙しくされているので、ときには気晴らしに着物でお出かけされます。


    ちちははを預けてちよいと秋袷     仕立屋お吟