2019年12月28日土曜日

単衣


単衣の仕立てを頼まれました。



こちらの渋い紫の紬、

依頼者さんが、値段の割にとてもいい紬みたいと思いながら、

キズや染みがないか反物の中の方まで調べていたら、

「本場大島紬」の織り込みと証紙が現れたそうです。

お目が高いですね。



背縫いを通常の1㎝にすると、よろけ縞が二本並んで気になるので、

1.5㎝にして、袋縫いにしました。



変り織りで、光線の具合で市松模様に見えます。

依頼者さんは、昔のサントリーのCM「少し愛して長~く愛して」がお好きで、

大原麗子のラフな着物姿に憧れておられるとか。

これからは、外出時だけでなく、家でもちょくちょく着られるのかな?


      着物きて割烹着きてお元日      仕立屋お吟


2019年12月22日日曜日

弓道用着物


弓道用の紋付の仕立てを頼まれました。



帝人の新素材です。



弓道では、男性は肌脱ぎといって、左肩を脱いで矢を射ます。

依頼者さんは、怪我で左腕が曲がりづらいため、

右袖は通常の仕立てですが、左は袖口と袖付を思いっきり広く仕立てました。

間違えないように、「ミ」と「ヒ」の糸印をつけました。



仕立て上がって敷きのしをします。

その後、紋屋さんへ刷り込み紋を依頼します。



五つ紋が入りました。

紋には、「染め紋」や「縫い紋」がありますが、

弓道用の着物には、「刷り込み紋」という印刷のような紋を入れます。



依頼者さんは「三つ扇」という珍しい紋だったため、追加料金3800円も掛かりました。


       紋付の躾をとりて弓始       仕立屋お吟


2019年12月15日日曜日

裾直し


男物の着物の裾の擦り切れを隠すよう頼まれました。



よく着られた着物でしょう、写真では分かりにくいですが、

かなりふきの部分が擦り切れています。



背縫いの裏を少々ほどいてひっくり返し、元の縫い目の1㎝下を一針抜きで縫います。

身丈が1㎝短くなりますが、仕方ありません。

背が縮んでいる場合は丁度いいですね。



褄の始末をして表に返し、裏を3㎜ふかして裾を整えます。

飾り躾をしてしのびを入れます。



手術と同様、ほどいた背縫いを縫い合わせて出来上がり。

2日ほど敷きのしします。


        冬ざるる男着物の風合ひも      仕立屋お吟




2019年12月7日土曜日

羽織の丈伸ばし


羽織の丈伸ばしと、裄と袖丈伸ばしを頼まれました。

全部ほどいて一から縫い直すほうが簡単なのですが、

依頼者さんの強い希望で、部分直しに挑戦することにしました。



50年ほど前の羽織で、丈83㎝は、今身長160㎝の人が着ると落ち着かないようです。



袖をはずしマチをはずし、衿も下半分ほどいて前下がりもほどいて、びらびらの状態です。

さらに胴はぎもほどいて、足し布をします。



袖巾と袖丈を伸ばして敷きのしします。

折り目はうっすら残っていますが、目立ちません。

日焼けがなくてよかったです。



通常8㎝ほどの衿先の縫い代が、18センチもあったので、10㎝羽織丈を長くできました。

先を読んで手順を考えて、、、というとても難しい仕事でしたが、

こうしてきれいに直って、充実感でいっぱいです。

お正月に着られるそうです。


       年用意して四世代の着物好き      仕立屋お吟







2019年11月29日金曜日

道中着


変った仕立て直しを頼まれました。



喪服をほどいて道中着に直します。

裏は、派手な長襦袢です。



長襦袢地の巾がせまいので、足し布をしました。



半信半疑で仕立てているので、お袖が縫いあがって嬉しい。

衿は、地衿と掛け衿を継ぎ足し、衽と衽を継ぎ足し、さらに両者を継ぎ足します。

着ると継ぎ足したところは見えません。



なんとか仕上がりました。

紋は、依頼者さん自ら、長襦袢の赤いしぼり部分でアップリケを作って隠されます。

着心地は想像以上によいです。



紐飾りは、リボンにしました。

お正月に後楽園で鼓を演奏されるのに、羽織ってゆかれるそうです。


鼓などたしなむ人に春著縫ふ    仕立屋お吟


2019年11月26日火曜日

裄伸ばし


訪問着の裄を伸ばすよう頼まれました。



訪問着は、左の胸元から袖にかけて、柄がつながっています。



肩巾と袖巾を出すと、どうしてもこのように柄がずれてしまいます。

仕方のないことです。

流れ的には違和感はないので、よしとしましょう。

    着物きて美しき母七五三     仕立屋お吟



2019年11月23日土曜日

琉球紬


琉球紬の仕立てを頼まれました。



お姑さんが洗い張りにだされて保存してあったものを貰われたそうです。

紬は、表裏ありませんので、裏返して仕立てます。



上前の膝あたりにあった変色部分が、下前にきて、着付けると見えません。



新品に生まれ変わりました。

琉球紬の肌触りに魅了されながら縫いました。


    ピンクとも薄紫とも春著縫ふ     仕立屋お吟




2019年11月14日木曜日

単衣


小紋の反物を単衣に仕立てるよう頼まれました。



よろけ縞に扇面が散っています。

「高級東京小紋」とあります。



本当にしっかりした絹で、長身の方ですが、残りでいしき当てがとれるほど一反が長かったです。

一反が長いという事は、物が良いということです。



どんなコーディネトでお出かけされるんでしょう。


     よろけ縞着て紅葉の後楽園      仕立屋お吟


2019年11月10日日曜日

裄伸ばし


裄を伸ばすよう頼まれました。

170㎝と長身の方で、直しの着物をもってちょこちょこ見えます。



塩沢紬ではないかとのこと。検索して見ると、

「括り・摺り込みによる蚊絣と呼ばれている細かい十字絣や亀甲絣によって構成された絣模様には、独特の上品さと落ち着きがあります」

とあるので、いよいよ確実かなと。



袖巾には縫い代がなく、肩巾のみ、1.5㎝出すことができました。

1.5㎝だと、身八つ口は直しません。

紬は、元の折り目が目立ちませんが、湿らせた正絹をあててコテをかけます。



ごく薄い緑、裏葉柳ですね。落ち着いた色です。

      塩沢といふ品を着る冬はじめ       仕立屋お吟






2019年11月3日日曜日

産着を七五三に


今季の七五三の揚げもそろそろ終わりでしょうか。



三歳の子の叔母様が着られた産着。

産着はお袖が平袖といって、丸みがないので丸みを作ります。

そして袖口まで縫い合わせます。



腰揚げは、半分より下めに。

肩揚げは肩幅より小さくなるようつまみます。

産着を直したものは、三歳の子にとって軽くて楽に着られます。


弟は生まれたばかり七五三       仕立屋お吟




2019年10月27日日曜日

男物アンサンブル


男物の大島のアンサンブルの仕立てを頼まれました。



亡きお父様の着物を、

お母様が洗い張りに出してきれいに取っておかれたものです。



羽織の衿は一番に折って、何日も布団に敷きのしします。



お父様は長身でしたので、肩裏や袖裏に足し布がしてあります。

洗い張り屋さんがほどかずに洗ってくれていました。



乳(羽織の紐通し)を付けているところ。

女物とは反対の向きに付けます。



男物の羽織は、一年に一枚あるかないかなので、虎の巻を見ながら縫います。

仕上がってほっとしています。

着物と長襦袢もお正月までには仕上げましょう。

着物好きの奥様と初詣に行かれます。

秋深みゆく衣擦れの音に縫ひ      仕立屋お吟






2019年10月23日水曜日

長襦袢


長襦袢の仕立てを頼まれました。



厄除けとして古くから使われる鱗文様です。



しゃり感のある生地は、上に着る着物の振りから長襦袢がのぞきがちになるので、

通常は直角になっている袖下に丸みをつけました。

さらに、肩巾をやや長めに、袖巾をやや短めにしました。

これで大丈夫かと思います。



依頼者さん、半衿は白が好みなので、市松の凹凸のある変り織りを張り込まれたそうです。



鱗文様は、一方ばかり向いているので、

上前の前身頃に上向きの鱗を持ってきました。

下前は下向きの鱗にしました。

後から見ると、右が上向き、左が下向き。袖は、右が下向き、左が上向きです。

長襦袢といえど、左右対称にならないのが、仕立屋の美学です。

紅葉狩りに初下ろしされるそうです。


半衿は白が好みや菊日和      仕立屋お吟







2019年10月20日日曜日

訪問着を七五三に


七歳の七五三用に、着物を直すよう頼まれました。



お祖母さまが娘時代に着られた訪問着です。



まず、身巾と肩巾を狭めました。かなりほっそりしました。



七歳なので、おませすぎず幼なすぎない位置で揚げをしました。

印象的な紺が素敵です。


       瑠璃色の祖母の着物を七五三     仕立屋お吟






2019年10月17日木曜日

掛け衿


浴衣の掛け衿を付け直すことにしました。



某百貨店で買った依頼者さんのお気に入りの反物で、仕上がるのを楽しみにしていらしたそうなんですが、

掛け衿の左右に同じ柄が来ています。



百貨店の仕立ては、とても丁寧だと聞いていますが、残念です。



残り布があったので、下前になる見えないところで継ぎ足したりして、

良い柄を持ってきました。

衿元がすっきりしたのがお分かりかと思います。


畳紙に夏の思ひ出しまひけり      仕立屋お吟






2019年10月14日月曜日

着物の揚げ


八歳の女の子の揚げを頼まれました。



日本舞踊の発表会で着ます。



八歳だと、肩揚げと腰揚げは、このくらいの位置がよさそうです。

肩揚げは、肩巾より少し小さく、腰揚げは、おませすぎず幼なすぎずといったところ。


八歳の日本舞踊に小鳥くる       仕立屋お吟