2024年9月5日木曜日

訪問着を羽織に

 夏羽織を仕立てます。


絹麻の訪問着をほどいて、裾の柄を活かして羽織に仕立てます。

肩山はつぐことになります。


後ろ身頃の手描きの白鷺と杭と波が下になりすぎないよう、通常、返り15㎝のところ、10㎝にしました。


衿にちゃんと白鷺が出るよう、かなり考えました。

前身頃の白鷺は恥ずかしがり屋で見え隠れしています。


とても個性的で涼しげな一枚の出来上がり。

実は、訪問着のときの胸元に、白鷺のいない杭と波だけの柄があり、

腰から上が残布となったので、ちゃっかり頂いて、仕立屋お吟のフレンチスリーブのブラウスにしました。和裁仲間がミシン縫いしてくれました。

苦心して仕上げたこの夏羽織、嫁に出す心境だったので、物語性のあるブラウスとなりました(笑)。


     白鷺も波も手描きや夏羽織   仕立屋お吟




2024年8月24日土曜日

本裁でこども用

 五歳の子に仕立てます。


ちりめんの小紋です。

本裁にすれば、中学生くらいなれば、大人用に仕立て直しできます。


2尺袖と棒衿を敷きのし。

掛け衿も、大人用の92㎝にして、折りこんで付けます。


上前の衽の裾が華やかになるよう柄合わせしました。

大人だと、衽のポイント柄は、もう少し上になります。


上前の衿元も華やかに。


着付けるととても可愛いと思います。


長襦袢は、半衿を付けて、こんな置き方で敷きのしします。

   新調の五歳のきもの祭笛   仕立屋お吟



2024年6月27日木曜日

男物の反物で女物を

単衣の長着と道中着を仕立てます。


 お父さんの形見の大島から、娘さん用の二枚を仕立てます。

古い反物なので、灯に透かして見ると、思わず、北斗七星や白鳥座やカシオペア座と名づけたくなるような、

星空のような虫食いが三か所あります。



かなり考えて、星座はすべて、縫い代と下前の衿に回して、

着付けると見えないように仕立てられました。

今後、出番が多いと嬉しいです。

    亡き父の反で誂へ夏着物   仕立屋お吟


2024年6月8日土曜日

墨流し

 墨流し作家恭平さんの、セオαの楊柳を仕立てます。


渋さの中に、ターコイスブルーやワインレッドのさし色が華やかです。


並幅が41㎝もあるので、背縫いを通常の1㎝にしたのでは、

脇の柄が縫い代に入ってしまいます。

思い切って背縫い4㎝に決め、全体のバランスを考えました。

コテや敷きのしの効きにくい布なので、2・3日は敷きのし。
背縫い4㎝が、濃すぎる染め部分が隠れていい感じになりました。
おくみに濃い墨流し部分がくるので、衿は淡い部分になります。
しかし、淡くなりすぎないよう、一番淡い衿の耳部分を4㎝切り落し、
布が重なってごろごろしないよう仕立てました。
コーディネートが楽しみです。
    夏にこそ着物四十路の同窓会   仕立屋お吟
    





2024年4月30日火曜日

綿麻紅梅

夏物の仕立てにかかります。

綿麻紅梅織に絞りをほどこしたものです。


ほんとうの着物好きさんは、夏こそ着物と仰います。

なんとも涼しげな一枚。

柄合わせはいらない生地ですが、ところどころ紫の絞りの濃い部分がありましたので、
左後ろの裾と、上前の衽の膝あたりに持ってきました。

右の後ろ袖にも、濃い部分を。


左の前袖と左の衿元にも濃い部分を持ってきました。

お吟さんの美学です(笑)。

    明るめの小雨つづきを単衣縫ふ    仕立屋お吟





 

2024年3月23日土曜日

祖母の色無地を四つ身に

 四つ身の仕立てに掛かります。


お祖母さまの色無地をときのししたもの。

四つ身なので、後ろ身頃を7.5㎝切り落とします。


袖と細い衿をつくって敷きのし。

背の一つ紋は、前身頃の縫い代に入るよう裁ちました。
七歳まで着られる四つ身の出来上がり。
祝い紐をつけて、百日参りにも羽織ります。
写真に撮るのを失念しましたが、友達が共布で髪飾りをつくってくれました。
依頼者さん、大喜びでした。
   祖母の衣産着となれり花三分   仕立屋お吟





2024年3月11日月曜日

同じ柄の色違い

 姉妹の小紋を仕立てます。


同じ柄の黄色とミントのちりめんです。

体格が少し違うので、中間どころの寸法にします。


先ず黄色、背やお尻にバランスよく柄が来るように。

上前のおくみの膝にポイント柄が来るように。


左胸が華やかになるように。

上前の衿元がごちゃごちゃしすぎず淋しくならず。


ミントの方、黄色と同じに裁ってもよかったのですが、

バランスは保ちつつ、逆に柄合わせしました。が、後から見るとあまり変わりません。


左胸から衿元にかけて、少し違うのが分かります。

四月に、姉妹でお茶会のお運びをします。

お客さんの目を引くことでしょう。

   お運びの姉妹の衣も春のいろ    仕立屋お吟





2024年2月25日日曜日

布が足りない

長身の方に単衣を仕立てます。


「波頭つながり」という紋様です。
ご自分で水通しをされ、広幅のいしき当てと衿裏と背伏せ布も、わけあり品を上手く買われました。

文様の名は「波頭つながり」ですが、背縫いで妙な波頭のつながりが出来ないよう気を付けました。
布が足りないので、繰越揚げはつままずに、
繰越裁ちにしました。

布が足りないので、衿は特殊な裁ち方をしました。
よって、衿の端は依頼者さんが用意してくださった紬の白生地を継ぎ足してあります。

波頭紋様裁てば春一番    仕立屋お吟


 

2024年2月9日金曜日

胴ぬき仕立て

胴ぬきの仕立てに掛かります。


 上級者さんの選んだのは、縞大島に有松の柳しぼりをほどこしたものに、

トランプ柄のちりめん。

袖とお好みのバチ衿をつくって敷きのし。

通常3㎜のふきを5㎜に整えて、存在感を出しました。
なるべく、トランプの裏の青がのぞくよう裁断しました。
袖口のふきも、通常2㎜のところ、3㎜に。

おくみの膝あたりに、ポイントのしぼりが来るように。


左の胸元にポイントのしぼりが来たので、上前の衿は縦のしぼりのみ。
着付けたお姿を、早く拝見したいです。
   
        有松の柳しぼりに春きざす   仕立屋お吟




2024年1月31日水曜日

振袖を訪問着に

振袖を訪問着に直します。


 袖下を切り落としたのでは、派手な柄が中途半端に残るので、

袖を作り直します。

左の前袖には大人しい柄のみ。

右の後ろ袖にも、大人しい柄のみ。
ごく普通の訪問着にしか見えません。
依頼者さんは、六年生の担任。
教え子達を送り出す卒業式に、袴の下に着られます。
きっと泣くでしょうね。
   教え子の卒業の日へきもの着て   仕立屋お吟



2024年1月19日金曜日

男物羽織

続いて、羽織の仕立てに掛かります。


 明るい色がお好きということで、やはり女物の昔の羽尺を選ばれました。

羽裏は、最近のもの、鳥獣戯画の柄です。

昔の羽尺は短いので、返りが少なくなります。

よって羽裏が身頃に取られて、片袖分が足りなくなるので、胴裏を使います。

昔の羽尺は巾も少ないので、袖に割り(つぎたし)を入れました。


割りに使う共布は、衿から捻出しました。

半巾になった衿には、着物の裏の金布を使いました。

片袖に使った胴裏も巾が足りないので、羽裏の端切れを接ぎ足しました。

こんなに継ぎ足し継ぎ足しで縫いあがった羽織ですが、

着るとほとんど分かりません。

むしろそのことを誇りに着ていただけたらと思います(笑)。

   御隠居が着物の師匠おでん酒   仕立屋お吟


2024年1月13日土曜日

男物

男物の着物の仕立てに掛かります。

男物はほとんどが地味な無地なので、明るい色のお好きな依頼者さん、

女物の紬を用意されました。


網代の柄の手触りのよい紬、利休色です。

袖と衿をつくって敷きのし。


男物の裏地は、金巾(かなきん)という、目の細かい薄地の木綿を使います。

裾のふきもこの金巾をのぞかせます。


袖口のふきは、共布を使います。

大阪への出張の足を延ばして、東京の下町から倉敷まで反物を持って来てくれた青年、

粋に着こなしてくれることでしょう。

   松過ぎの銭湯よろし居酒屋も    仕立屋お吟